外壁点検の現状
下記、現在主に使われる外壁調査の方法についてご説明します。
① 目視調査
目視や双眼鏡等を用いた調査方法です。3年に一度、専門の調査会社によって、手の届く範囲で打診調査と目視調査を行う必要があります。
この方法にて外壁のひび割れ、タイルの欠損などの損傷状況を把握します。
但し、目視調査だけで建物全体の状況は診断できないため10年に1度、または目視調査結果で異常が発見された場合全面的な調査を行う必要があります。
※3年以内に外壁改修が確実に予定されている場合もしくは、歩行者の安全確保の対策がとられている場合、打診調査は必須ではありません。詳しくは国土交通省の告示第282号をご覧ください。
② 打診調査
国土交通省の告示第282号における外壁診断方法は「テストハンマーによる診断等」と定義され、外壁診断手法の多くは点検員による打診調査が一般的です。
点検員はテストハンマーや専用の打診棒で直接外壁タイルの対面を叩き、その音の相違で浮き部と検出する方法です。
点検員は手動で行うため、複雑な壁面であっても高精度の診断が可能になります。
調査を行うために足場の設置、ブランコやゴンドラ、高所作業車などを利用す る事があります。
③ 赤外線サーモグラフィー
サーモカメラによる撮影データを分析し、温度差によって外壁の損傷状況を確認する方法です。熱画像を撮る事で雨漏りやひび割れ、浮き部などをチェックします。
特殊建築物等定期調査業務基準に認められている手段ですが、地域によって赤外線法のみの診断が認められない事があります。
赤外線調査はドローンなどを用いて低コストで行う事が可能なものの、温度差に影響する要素が多いため、精度が変動する時もあります。
現在の課題
2014年の国土交通省の報告によれば、実際に外壁調査の報告が行われた割合は、対象建築物の72.6%以下で、法的に義務付けられたにもかかわらず、十分な調査が行われていないのが現状です。
調査が十分に行われていない背景としては、
・多大な費用負担
・労働者不足による人員確保が困難
が要因として考えられます。
従来の打診調査では、作業員がタイル1枚1枚の打診調査を行う事になり、労働の負担が増えてしまい、作業は非常に時間がかかります。
タイルの浮き状況を手で記録する時間が、報告書の作成時間にも影響を与えます。
この状況を防ぐために人数を増やした場合、コストが更に増加する事が多いです。
また、利用される手法によって作業日数も異なり、周りへの迷惑が大きく変わります。
これらの問題を解決するために、従来の打診法を応用するとともにロボットを用いた外壁診断技術「ウォールサーベイシステム®」の活用を推進しています。
※WSSは、国土交通省告示に例示として定められた手法ではありません。本手法で実施した結果が適用されないこともあります。
事前に各自治体へお問い合わせください。
WSSの技術
「ウォールサーベイシステム®」は、連続的な打撃を与えられる打診棒とその打診棒を複数配置し、モーターで回転させることで自動的に一定の打撃を点検対象構造物の表面に与える機器で構成されています。
ウォールサーベイシステムは有限会社ダイヤモンド技建と株式会社太平洋コンサルタントの登録商標です。
WSSの特長
1. 作業効率UP
ロボを屋上から吊るすだけで広い壁面でも短時間で調査が可能です。
また、作業人数と作業時間を大幅に削減できます。
作業効率UP
作業コストDOWN
安定なシステム
正確な診断
安全性
周辺リスクの低減
報告のデジタル化
2. 安定なシステム
ファンによりロボ内部を負圧として、壁に吸い付くため、風で揺れません。
他の調査方法と比べて風や天候の影響を受けにくいです。
※但し、雨天では調査ができません。
3. 正確な診断
コロリン転検棒、WSロッド、WSロボの3種類のツールを活用して、きめ細かに調査します。従来の点検棒による打診と同様のため、打診調査の経験者であれば容易に判定が可能であり、判定者の経験差が生じにくいです。
また、音声データはその場で図に落とし、記録した映像データと照らし合わせながら後日清書します。
4. 安全性
ゴンドラや足場の設置が不要で、それらによる安全リスクがございません。
WSロボも、落下しないようにロープを屋上の親綱に巻きつけてから操作します。
5. 周辺リスクの低減
作業員は屋上からロボを吊るして打診するため、部屋やオフィスなどのプライバシーが保護されます。
また、セッティングを含めて作業時間が短いので、作業が比較的に早く終わり、近隣や居住者への影響を低減できます。
6. 報告のデジタル化
映像はビデオカメラで撮影をし、音声はロボに搭載しているBluetoothマイクで拾いますので、調査が終わった後でも繰り返し打診音を確認する事ができます。
これらはデータとして保存される事によって、実際に調査したエビデンスが確保され、継続的な調査を行う際には過去の調査結果との比較評価も容易になります。